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会社を壊すのは「能力の低い人」ではない

本当に怖いのは、そこそこ能力があり、そこそこ権力を持ち、自分より優秀な人間を潰す人です。誰に人を評価する権限を与えるのか、という話です。

公立中学校に通われていた人なら一学年を思い浮かべてみてください。勉強がものすごくできる子もいれば、平均的な子もいる。勉強にはまったく興味がない子もいるし、ヤンキーもいる。そして、ときどき「なんやこいつ」と思うような、妙に尖った子がいます。

ここでは人間を優劣で順位付けするのではなく、あえて思考実験として、いくつかのタイプに分けてみます。ちなみに、自分が中学時代にどのタイプだったかは、この記事の趣旨と関係ないので伏せておきます。

S・A・B・C・D、そしてYとZ

  • S:超天才学者タイプ(目安は0.01%)。規格外の知性を持ち、単に勉強ができるのではなく、物事の本質や、そもそもの問題設定を疑う。
  • A:東大・京大に入るレベルの、非常に高い能力を持つタイプ(目安は0.1%)。理解力、論理力、処理能力が高く、難しい問題を高い精度で解く。
  • B:平均以上の能力を持つタイプ。実務能力があり、経験を積めば大手企業の幹部にもなる。
  • C:普通の能力を持つタイプ。決められたことをきちんと実行し、周囲と協調する。
  • D:学校の勉強というゲームに興味がないタイプ。能力が低いとは限らず、学校の評価システムに乗らないだけ。

パーセンテージは、あくまで感覚的な目安です。ちなみに0.01%は1万人に1人で、公立中学の一学年が200人なら、50学年に1人です。会ったことがなくて当然です。

この縦の分類とは別の軸に、義理や人間関係、上下関係、仲間を重視する、いわゆるヤンキータイプの「Y」と、特殊な能力や強烈な創造性を持つ、特殊能力保持者の「Z」がいると考えます。ZはSにもAにもいますし、Dにもいます。学校の成績だけでは見つけられない人たちです。

会社を支えているのは、実はC

会社という観点で見ると、面白いことが起こります。SやAばかり集めれば強い会社になるわけではありません。会社の日常を支えているのは、むしろCです。決められた仕事をきちんとする、約束を守る、周囲と協力する、同じ品質の仕事を繰り返す。会社の仕事の大部分は、毎日新しい発明をすることではないからです。

Aは難しい問題を解き、Zは今まで存在しなかったものを作り、Yは仲間をまとめて現場を動かします。Sが本当にいるなら、普通の管理方法で縛らず、好きに研究させた方が、とんでもないものを生み出すかもしれません。そしてBも非常に重要です。AやZの言っていることを理解し、それをCが実行できる仕事に落とし込める。そんなBは、優秀な管理職になれます。問題は、ここからです。

「最悪のB」がいる

Bには、危険なタイプがいます。能力がない人ではありません。そこそこ能力がある人です。仕事もそこそこでき、説明もでき、社内政治もそれなりにでき、上司の評価も悪くない。だから管理職になります。

ところが、自分より明らかに能力の高いAや、自分には理解できない発想をするZが現れたときに、問題が起こります。健全なBなら「自分にはまだ理解できない。もう少し説明してほしい」と言えます。最悪のBは違います。「そんなの現実的じゃない」「現場を分かっていない」「勝手なことをするな」となる。自分が理解できないことを、相手がおかしいことに変換してしまうのです。ここから、組織の破壊が始まります。

最悪のBは、Cを味方につける

Zはたいてい変わっています。みんなが右を向いているときに、一人だけ左を向いたりする。だから攻撃するのは簡単です。「アイツ、協調性ないよな」「いつも変なこと言ってるやろ」。こうして最悪のBは、Cの同調性を利用します。

すると、議論のテーマがすり替わります。本来は「Zの提案は正しいのか」を議論すべきだったのに、いつの間にか「Zは組織にとって問題のある人間なのか」という話になる。こうなるとZは弱い。Zは黙り、それでも駄目なら辞めます。そして最悪のBは言います。「やっぱりアイツは会社に合わなかった」。これで物語が完成します。

本当に恐ろしいのは、再生産

本当の問題は、一人のZが辞めることではありません。最悪のBが管理職になれば、人事評価にも、採用にも、昇進にも関わります。そのとき、自分より圧倒的に優秀なAやZを引き上げるでしょうか。おそらく、しません。自分を脅かさない人、自分の意見に賛成する人、自分と似た価値観を持つ人を選ぶようになります。「一流は一流を雇い、二流は三流を雇う」という言葉がありますが、まさにその通りのことが起こるわけです。

こうして、最悪のBが最悪のBを登用する再生産が始まります。Aは嫌気が差して辞め、Zは潰されるか辞め、良いBは余計なことを言わなくなり、Cは空気を読むようになる。かつて優秀だった会社が、少しずつ凡庸になっていきます。

以前、「プラスは足し算、マイナスは掛け算で組織に効いてくる」という記事を書きましたが、最悪のBはまさに掛け算で効いてきます。本人がマイナス10なのではなく、Aの能力を0.7に、Zの能力を0.3にし、良いBを黙らせ、Cに忖度を覚えさせる。能力の低い人が一人いるだけなら、配置を変えたり、教育したり、仕事を限定したりすればいい。本当に怖いのは、そこそこ能力があり、そこそこ権力を持ち、自分より優秀な人間を潰す人です。

経営者が見るべきもの

だから経営者が考えるべきなのは、「優秀な人材をどう採用するか」だけではないと思っています。それ以上に、「誰に人を評価する権限を与えるのか」を見る必要があります。Zを採用しても、その上司が最悪のBなら意味がありません。逆に、良いBが間にいれば、AやZの能力をCにつなぎ、組織全体の成果に変えることができます。

会社に必要なのは、天才ばかりではありません。普通の人も、尖った人も、まとめる人も必要です。大切なのは、それぞれを適切な場所に置くこと。そして何より、自分より優秀な人間を喜んで使える人を、上に置くこと。組織の強さを決めるのは、案外そこなのかもしれません。

ちなみに、うちの会社でこれを実践しようとすると、まず社長である自分が、自分より優秀な人間を喜んで使えるかどうかが問われます。幸い、AIという自分より優秀な部下を毎日喜んで使っているので、練習だけは十分に積んでいます。

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