先日、福井での対談収録のあとに、出演者の方々が宿で「欲望の本質」について雑談を続ける、ReHacQさんの動画の内容を知る機会がありました。1時間半を超える長さでしたが、一人の人間として、考えさせられる話が多かったので、印象に残った部分をまとめておきます。
食欲は有限、承認欲求は無限
動画では、まず「欲求」と「欲望」の違いが整理されていました。食欲のような生理的欲求は、身体的な限界があり、自分の中で完結します。ところが、承認や物欲といった社会的な欲求は、他者が絡んだ途端に、際限がなくなる、という話です。ジャック・ラカンの「欲望とは他者の欲望である」という言葉がありますが、他人の視線や評価が入ることで、欲望が無限に膨らんでいく構造が、ポルシェを例に説明されていました。4台目のポルシェが欲しくなる、という話です。ちなみに、ポルシェが4台あっても、一度に運転できるのは1台だけです。
欲望には、「利確」の場所が必要
では、無限に膨らむ欲望に、どうブレーキをかけるのか。動画の中で出てきた答えが、「ローカル」を持つこと、そして、そこで「利確」することでした。株の利益確定になぞらえて、変化の激しい世界の中で、ある程度安定した、壊れにくい場所や関係性を持つことを「利確」と呼んでいます。成功した世界に入ると、常に「上」が見えてしまって、幸せになれない。だから、どこかで利益を確定させないと、いずれ転落してしまう、という考え方です。
その場所は、地元かもしれませんし、家族や友人関係かもしれません。他者の評価に左右されず、自分が作ったものそのものを愛せること、というのも、一つの「ローカル」として挙げられていました。
脱成長とは、成長をやめることではない
この話の延長として、脱成長とは「成長をやめること」ではなく、終わりのない競争や苦しみから、適切な距離を取ることだ、という整理も印象的でした。会社を経営していると、「もっと伸ばせるはず」「まだ足りない」という気持ちは、放っておくと際限なく膨らみます。成長を否定するのではなく、どこまで走るかを自分で決める。そう考えると、少し肩の力が抜けるような気がします。
比べないことが、幸福度を上げる?
もう一つ面白かったのが、福井県が幸福度ランキングで上位の常連であることについて、その理由の一つに、他県と比較しない文化があるのではないか、という仮説です。いいねの数や再生数のように、あらゆるものが数値化されて見える今の社会で、比べないという姿勢は、それだけで一つの「利確」なのかもしれません。
AIも、「無限の知性」という神話になりうる
締めくくりには、AIについての懸念も語られていました。3.11で、原子力は絶対に安全だという「神話」が崩れたように、AIにも「無限の知性」という新しい神話が生まれていて、同じような暴走や事故が起きる可能性があるのではないか、という指摘です。便利だからこそ、無限に頼りたくなる。ここにも、欲望のブレーキが必要なのだと思います。
ちなみに、株の利確は「まだ上がるかもしれない」と思った瞬間に難しくなるそうです。欲望の利確が難しいのも、きっと同じ理由です。そう言いながら、このブログの「あと1本だけ書こう」の利確が、いまだにできていません。
